相当ええもんのはずや」と母。
「確かに日曜になると、バイオリンを眺めてはクラシックを聞いてはったけど、だいたい
ホルンを吹いてた人がそんな高価なバイオリンを買うか?」と私が見てみると、確かに
バイオリンの中に「ストラディバリウス」とサインがあるんです!!
「本物!?」
「本物やったら一気に大金持ちや!!」
「パパ、それを売ったらプラレール買える?」
「プラレール?そんなもん100個でも200個でも買ってやる!!」 。
もう、みんなで上や下への大騒ぎ。
「どこに売りに行けばええんやろ」
「何言うてんの、ストラディバリウスやで!ほれ、あの有名な海外のオークションに
出さなあかん、ゴッホとかピカソとかの絵を出してるとこや」
「サザビーズ!!」
「それそれ!!」
「どうやって手続きしたらええのやろ」
「まずは鑑定や、信用のおけるとこで鑑定してもらわんと」
「それより人に聞かれたら大変や、噂になったら盗まれる」
それから家中の窓を閉め、蒸し風呂のような部屋の中で、さてこれを
みんなで頭を付き合わせ、母が
「まずはお父さんの仏壇に供えてみんなでお礼を言わないと」
と、全員で仏壇の部屋へ駆け降りて、仏壇にバイオリンを供えて
「私達があとあと困らないように残してくれたんやなあ、ほんまにありがとう。」
と全員で手を合わせました。
「今夜はお寿司でも行こ、僕がおごるわ」と弟。
「何言うてんの、ストラディバリウスを置いて出かけるなんて、盗まれたらどうするの!」
「そりゃそうや」。
もうみんな頭がブッ飛んでしまい、とにかく誰にも言わないと固く約束し、
弟の子どもはまだ小さいのでポロッと漏らすかもしれないから鑑定までは外出禁止と
なりました。
早速 弟が2日後にストラディバリウスを人目につかぬように毛布にくるみ、有名な楽器屋に
鑑定に行きました。
…結果は…
「お客さん、ストラディバリウスはピンからキリまでありますのや。これはキリのほう
ですな。大量生産されたもんですわ。しかも保存状態も悪い。売り物にはなりませんわ」
と冷たくあしらわれたそうです。
冷静に考えたら、貧乏学生の父が買えるはずない。そんな高価なものがうちにあるはずが
ない。冷静に考えたらわかる事なのに、なのになんであんなにみんな舞い上がってしまった
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